亀丸です。

有名な企業の名前の由来に、易経の言葉が使われていることがあります。

たとえば、資生堂は易経の「万物資性(ばんぶつしせい)」という言葉から、IT企業の楽天は易経の「楽天知命(らくてんちめい)」という言葉から付けられた企業名です。

今回の記事では、化学メーカーの旭化成の由来を取り上げてみます。

天文(てんもん)を観てもって時変を察し、人文(じんもん)を観てもって天下を化成す

旭化成のホームページをみると「化成」というのは易経からつけられたものだと書いてあります。

易経には「化成」という言葉がいくつか出てきており、山火賁という卦の「天文を観てもって時変を察し、人文を観てもって天下を化成す」という言葉か、離為火という卦の「重明(ちょうめい)もって正(せい)に麗(つ)けば、すなわち天下を化成す」という言葉のどちらかからとったものでしょう。両方ともいい意味の言葉なので、両方のイメージがかかっているのかもしれません。

今回は「天文を観てもって時変を察し、人文を観てもって天下を化成す」という言葉のほうを取り上げてみようと思います。

それにしても、「化成」という言葉はいかにも化学メーカーらしいですよね。
それが3000年前の易経の言葉からきているというのが面白いところだと思います。

ちなみに易経とは無関係ですが、旭化成の「旭」のほうは、源平の合戦のときの武将・木曽義仲(きそよしなか)が「旭将軍」と呼ばれたところからつけられたものだそうです。滋賀県にあった工場の敷地内に木曽義仲を祀(まつ)ったお寺があったことに由来するそうです。

天文学は星を観る、人文学は人を観る

文学部や心理学部、芸術学部といった文化や人間そのものを考える学問を「人文学」と呼びます。

この「人文学」という言葉は、「天文学」という言葉と対比関係にある言葉です。
天文学が星の動きをみて変化を予測しようとする学問として発達したものだとすると、人文学は人の動きをみて変化を予測しようとする学問です。

人間の行動や文化というのはとても観察しがいがあるものです。

年の瀬になると、毎年ヒット商品ランキングみたいなのをやっていますが、なぜその商品が流行(はや)ったのだろうと考えていくと、とても楽しい。今の時代の求めているものがヒット商品から感じ取れます。

ヒットした漫画やドラマはその時代の影響を強く受けています。
もちろん物語そのものの完成度が高いからヒットしているのでしょうが、多くの人にウケているものはやはりその時代の空気をまとっています。時代の求める感覚が宿っているからこそヒットしているのです。

だから、人の動きや文化をよくよく観察すれば、今の時代に何が起こっているのか、この次の時代がどう変化してゆくのかがみえてくるかもしれません。

私が今、ここで書いたことは別に珍しくもなんともない考え方でしょう。

今の時代にはあまりに普通の考え方です。
大きな企業はどこもマーケティングを重視し、時代のニーズが何かを察知して、次の時代に対応しようとしのぎを削っています。

この考え方が3000年前の易経の時代からあったということが面白いのです。

人の動きを観察して、時代を動かせ!

そう考えていったら、マーケティングやコンサルティングというのは、占星術師が星を観るように、人文を観て時代の動きを感じる「占い師」のようなものかもしれませんね。

でも、この易経の言葉──
「人文を観てもって天下を化成す」

「天下を化成する」って、ものすごく力強い響きがありませんか?

文化を観察するということは、単に時代の動きを察知するだけではないのです。
天下(世のなか)を変化させて、新しい時代にしていく力があるのです。
人文学を専攻している人や、マーケティングやコンサルティングなどの仕事をしている人はなんだか勇気づけられませんか? 3000年前にそんなことを言った人がいたのです。


天文を観てもって


この「人文を観てもって天下を化成す」という言葉を私は「人の動きを観察して、時代を動かせ!」と意訳しています。

人文学を専攻している人や、マーケティングやコンサルティングなどの仕事をしている人にとって、この言葉は一生の座右の銘にできる一言だろうと私は思っています。




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