亀丸です。

前編からの続きです。
http://kamemaru.net/taiinreki.html

太陰暦を実際に今の社会に使ったら不便?

この太陰暦(太陰太陽暦)って、完璧な暦じゃん!

と思われるかもしれませんが、でも実際に現代社会で使ってみると、不便なことも多いでしょう。

というのも、同じ4月であっても最大で一か月ぐらい、太陽の位置でみればズレが生じています。「今年のサクラは早咲きだな」というのは本当に早咲きなのか、暦上の問題にすぎないのか、よくわからなくなるんです。農業をしている人には不便が生じるでしょう。

それに「うるう月」というのも厄介です。
8月のあとに9月ではなくて、「閏(うるう)8月」といって、もう一度8月が始まったりするのです。

きっと混乱するはずです。

たとえば、8月22日ぐらいに「じゃあ、9月15日までにやっといて」という仕事の連絡がきても、それは本当に「2か月後の9月15日まで」なのか、それとも来月が閏8月なのを忘れていて「来月の15日まで」という意味で言っているのか、いちいち確認をとる必要があるでしょう。うるう月によって、多くのスケジュールミスが起こることが想像つきます。

閏月困る


されど現代でも太陰暦を重視されている

世のなかはたいてい、シンプルで使い勝手のいいほうが勝つものです。

太陽と月だったら、どう考えても太陽のほうが重要です。

月の満ち欠けはもしかしたらなんらかの影響を人類に与えているかもしれませんが、太陽はそんなことを考えなくたって私たちの暮らしや動植物に多大な影響を与えているのは確かです。

それでシンプルな「太陽暦」が勝ち残り、16世紀に西洋で定められたグレゴリオ暦が現行太陽暦として使われているのです。

春節混雑


にもかかわらず、世界の国々を見渡すと今でも「太陰暦」を重視している国が少なくないのです。

たとえば、中国では毎年2月頃「旧正月」を祝う習慣があります。
旧正月に実家に帰るために、切符を求めて駅に長蛇の列をつくっている中国人の姿をニュースでみたことがあるでしょう。この旧正月というのは「太陰暦(旧暦)」の1月1日のことです。

中国本土だけでなく、シンガポールやタイの中華街など華人(かじん)が住む地域はみな旧正月を祝いますし、チベット人も、リス族やアカ族などチベット系の少数民族の人たちも、旧正月を本当の正月として祝います。

イスラム教の世界も太陰暦を使います。

月と星の旗をみれば明らかなように、ムスリムの人たちは月を重要視しています。
日中の断食が義務づけられている「ラマダン月」は、太陰暦でつくられたイスラム暦によって毎年定められています。

現代社会だってそうなのですから、古い時代は世界中でもっと太陰暦が重要視されていました。

『満月から歴史を考えてみた』の後半に出てきますが、古いユダヤ暦もヒンドゥー暦も月の満ち欠けと連動した太陰暦です。


なぜそこまで世界中で太陰暦が使われてきたのでしょうか?

それはシンプルな理由でしょう。
月の満ち欠けがやっぱり人間になんらかの影響を及ぼしているという実感が、多くの人にあったからなんでしょう。

昔の人々の自然に対する鋭敏な感覚はきっと間違っていないと思います。単なる思い込み以上のなにかがきっとあるのでしょう。その点については私も信じています。

だから、現代日本の私たちもとりあえずは便利な太陽暦を使いながらも、月の満ち欠けのサイクルを無視せずに過ごしていきたいものです。