亀丸です。

「腑に落ちる!孔子と易占」という連載なので、今回は孔子と易占にまつわる有名な説話を紹介してみます。

火風鼎の4爻は不吉

まず64卦の話をしてみます。
64卦のなかに「火風鼎(かふうてい)」という卦があります。

この「鼎(かなえ)」というのは、古代の祭礼で使われたと考えられる3本足の青銅器のことです。
この鼎がどのように使われていたのかはよくわかっていません。
鼎を鍋のように使って食べ物を煮込み、王侯たちの晩餐会で振るまわれたとも考えられています。

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さて、易経のその「火風鼎」を読んでいると、4爻に不吉な言葉が刻まれています。

「鼎の足を折る。公の食事を覆(くつがえ)す」

鼎の足が折れて、なかに入っていた貴賓客のためのご馳走がひっくり返ってこぼれてしまったとあります。
易経に書いていることはあいかわらずよくわかりませんが、これはあまり良いことではなさそうです。

孔子の弟子・顔回と子貢

さて、孔子のお話に戻りましょう。

孔子先生にはたくさんのお弟子さんがいるのですが、なかでもとくに可愛がっていたのは顔回(がんかい)子貢(しこう)の二人です。

二人とも孔子より30歳ほど若く、頭が良く、孔子にとって教えがいのある弟子だったようです。彼らの将来に希望を託すことが、50代以降の孔子の人生の柱となりました。

顔回と子貢

二人の性格は少し異なります。

顔回はとても純粋で素直な性格。孔子が理想としていた、無垢な人間像をもっとも体現していた人でした。孔子は「顔回のようになりたい」とさえ言っています。
でも、お人よしで素直な人なので、商売や政治にあまり向いてはいませんでした。

一方の子貢は、才覚を鼻にかけるところがありますが、とても頭の切れる人で、商才があったらしく、教団のために交易などで財を稼いでいたと伝わります。
孔子という人が現代まで伝わっているのは、孔子の死後、この子貢が残された弟子たちを経済的に支えて、教えを全国に広めていったからです。

周囲からはライバルのようにみられていた子貢と顔回ですが、仲はとても良かったようです。
同世代で、頭の良さも似ていたので、お互いに尊敬しあえる関係でした。

孔子の弟子が帰ってこない!

こんな説話が残っています。

あるとき、子貢はどこかの国に出かけていました。
おそらく交易か何かの仕事があったのでしょう。
ところが予定日になっても、子貢が帰ってこないのです。

心配した孔子と弟子たちは、易で安否を占ってみることにしました。
出てきたのは「火風鼎」。しかもその4爻だったのです。

「鼎の足を折る」

易経には不吉なことが書かれていました。

鼎の足が折れている……。
足が折れているのだから、もう歩くことができないということだ……。
子貢はもう帰ってこないんじゃないか……。

弟子たちはそう解釈しました。
みんな無言になり、それ以上の言葉が出てきませんでした。

その時、顔回がニヤニヤと笑い出したのです。

孔子は顔回に訊ねました。
「顔回や。なんでお前は笑っているのかね?」

顔回は自信たっぷりにこう答えました。
「子貢は舟に乗って帰ってくるんですよ! そう、それもいっぱいの財宝を積んだ舟に乗って!」

「それはどういうことなのかね?」
「だって、八卦の風は舟を表すじゃないですか」

数日後、顔回の解釈どおり、子貢は無事に孔子たちのもとに帰ってきたのでした。


この話の面白さとは?

皆さんは、この話の面白さがどこにあるかわかりますか?
日本人には面白さのポイントがピンとこないかもしれません。

これは「(占いとか、夢のお告げとかの)解釈を変えれば、運命自体も変わるという面白さの話です。
以前も「梨を切る夢の話」という記事で解説しましたが、中国の人たちはこういう「解釈一つで、運命自体を変えた話」を好むのです。

孔子にとって、愛する弟子の子貢が帰ってくるか来ないかだったら、絶対に帰ってきたほうがいい。
だったら占いの結果を、なんとか解釈を変えて、運命を望む方向に変更できないかと考えるのです。

顔回は「風」を「舟」と解釈し直した

顔回は火風鼎をどのように解釈したのでしょうか?

顔回は、八卦の「風」は、「木」または「舟」と訳せるというルールを思い出したのです。

これは易占いの基本ルールの一つです。
易占を学ばれている方は、八卦の「風」は火風鼎以外の卦でも、「木」または「舟」のイメージから解釈できることをおぼえておいてください。

火風鼎の顔回の解釈


そう考えれば、火風鼎は「火を乗せた舟」という風にイメージできます。
八卦の「火」は美しいものの象徴です。宝石や装飾品は「火」で表されます。
「宝石や装飾品を載せた舟」、つまり「財宝を積んだ舟」だと、顔回はイメージを一気に膨らませたのです。

4爻とかはどうでもいい。
火風鼎を「子貢が財宝を積んだ船に乗って帰ってくる」象だとみなしたのです。

良いイメージができれば、あとは自信を持ってそのイメージで話をすることです。
泰然と、まるで前々から決まっていたかのように、自分の解釈を信じ込んで語る。それが「解釈を変えて、運命を変える」コツなのです。


10に続く。





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※この孔子と火風鼎の話は、『論語』ではなく、『北堂書鈔』や『誠齋雜記(楊萬里)』といった、後の時代の書物に書かれている物語です。
本当にあった話かどうかはわかりませんが、日本でいえば石田三成の3杯のお茶の話のように、いかにもありそうな偉人の話として、易好きの中国人に愛されている話です。

子貢、顔回のキャラクターと、易占いの解釈の妙が味わえる、短いけど面白い話だと思います。



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