亀丸です。

易経(易占い)の言葉にはいくつか良い言葉があって、そのひとつに「寒泉」というものがあります。
「水風井」という卦のなかに書かれている言葉で、私のとても好きな言葉です。

「寒」は「寒い」ではなく、「冷たい」と訳すとわかりやすいです。
どんなときも「冷たい泉」でい続けようという意味になります。

すべての仕事にあてはまる言葉ですが、とりわけ客商売をしている人には深く入ってくる言葉だと思います。

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「水風井」の卦は井戸の話です。

ある村が、戦争か何かで荒れ果てて、井戸だけが取り残されました。
村人は皆どこかに行ってしまい、取り残された井戸は利用されなくなりました。

それでも井戸は冷水を出し続けます。

井戸が毎日湧かしている水は誰も飲むことがなく、無駄になっていきます。
それでも井戸は冷たい水を出し続けなければいけないのです。

一度腐ってしまった井戸を元に戻すのは大変です。
誰かにもう一度美味しい(冷たい)水を飲ませるためには、たとえ無駄になろうとも毎日、冷水を出す努力を続けるしかないのです。

日々冷たい水を出し続けていると、ある日どこかの旅人がその井戸に立ち寄る日がやってくるでしょう。
井戸の水の冷たさに感激し、この井戸のことをおぼえてくれるかもしれません。
「あそこにはいい水場がある」と誰かに伝えるかもしれません。
次第に多くの人に知られるようになり、人が集まって、いつか井戸の周りに再び村ができるでしょう。

水場のないところに人は住めません。
もちろん良い水場があるからといって、必ずしも人が住むとは限りません。
でも、良い水場がないところに人が住むことはけしてないのです。

だから、人が来ようが来まいが、どんなときも「寒泉」でい続けよう──というお話です。


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同じ中国の言葉でいうなら「桃李はものを言わざるけれど、その下に自然と道(蹊)を成す」なども似た意味の言葉です。
松坂桃李さんや成蹊大学の名前の由来の言葉ですね。

桃や李(すもも)の木は美味しい果実を毎年作り続けていれば、黙っていてもいつか人々が集まってくるということ。

他人の評価は後回しに考えておいて、自分が良いと思うことをし続ける努力が大切──
と古人は説いたわけです。

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占いの鑑定でよくこんなご質問を受けます。

「私は職場で、周囲の人たちにどんな風に思われているのですか?」
「上司は私をどう評価しているんですか?」


他者からの評価をやたらと気にされている方が少なくありません。
どちらかというと女性のほうが多いのですが、男性でも気にされている方はされています。

確かに仕事や商売というのは、他人に評価されてなんぼなところがあります。
自分一人だけが良いと思って仕事をしていても、他人に評価されなければただの一人よがり。職場の人やお客さんたちに評価されてはじめて意味が出てきます。

でも、「他者目線」だけで仕事をしていると必ず苦しくなります。

結果を求めて他人に媚びてしまう。
でも、他人はみんな言うことがバラバラ。
それに振り回されていると、次第に仕事の質が雑になっていきます。
本来のあるべき仕事の姿から離れていってしまいます。

だから時々、他人からの評価や結果を気にするより「自分は今、本当に良い仕事ができているのか?」と自分自身に問うてみることが大切だと思うのです。

もし自分が「良い仕事」ができてないと思えば、それを自ら改める。
自分は「良い仕事」をしていると認めてあげられるのならば、他者がどう思おうとそれでいいのです。
良い仕事ができていれば、今は結果(他人からの評価や利益)が出ていなくても、きっと後から付いてきますから。



自分は今、冷たい水をちゃんと出せているのか?──

仕事を占ったときに「水風井(寒泉)」が出た場合は、今すぐ他人やお客さんからの評価を欲しがるのではなくて、そういう「自分目線」に立ち返ってみることを示唆しているんだなと、私は解釈しています。




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